この記事を読めば、玄米に毒があるの?という疑問に対して答えを出せると思います。
玄米=健康食というイメージがありますよね。
その一方で「実は健康に良くない」「体調が悪くなる」という意見もある。
あるホームページでは「玄米最高!」と書いてあるのに、別のホームページだと「玄米はヤバイ!」みたいに書いてある。
インターネット上には大量の情報があって、何が正しいのかよく分からなくなります。
自分のところの商品を売るために大げさな話をしたり、嘘をついたり、他の商品の悪口を言ったり…
じゃあ何を信じたらいいの?ってなりますよね。
それはエビデンス(科学的な根拠)です。
エビデンスって何?
エビデンスというのは科学的な根拠のことです。
誰かが「あの女優って整形してるよね」と言ってもそれは根拠がないので嘘か本当か分かりません。
個人的な意見、他の人から聞いた話、嘘、嫉妬、などなど(笑)
そういう嘘か本当か分からない情報はインターネット上に数多くあります。
怪しい情報に惑わされないように、科学的な根拠のある情報を信じましょう。
データは嘘をつきません。
ただしズルい見せ方で、人を勘違いさせることはできる。
玄米だけでなく、多くの健康食品で商品を売るために考えを誘導する傾向があります。
自分の身を守るために、信頼できる情報を見つけてくださいね。
玄米の毒と言われている成分
玄米の毒と言われているのは以下3つの成分です。
- アブシシン酸(旧名:アブシジン酸)
- フィチン酸
- アクリルアミド
アブシシン酸やフィチン酸を種子毒や発芽毒と言う人もいます。
先にネタバレすると、玄米に関しては3つとも毒性は高くありません。
そして簡単に無害化できます。
1つ1つ見ていきましょう。
あ、ごめんなさい、長いから気になる箇所だけ見てもいいと思います。
アブシシン酸(旧名:アブシジン酸)

アブシシン酸(ABAと呼ばれています)は植物ホルモンの1種です。
植物が環境に適応するために、気孔を閉じる、乾燥に強くなる、種子を成熟・休眠させる等の作用があります。
色々な環境で植物が育つために重要なホルモンなんですね。
種子が発芽するのを防ぐ働き(発芽抑制因子)を持っています。
アブシシン酸が有害と言われている理由は、2007年の論文「Abscisic acid is an endogenous cytokine in human granulocytes with cyclic ADP-ribose as second messenger」にあります。
この論文では、アブシシン酸が活性酸素を増やすという内容が書かれています。
論文の主旨は、アブシシン酸の働きを利用することで、新しい薬に利用できるかもしれないという内容です。
論文の中身をきちんと読むと複数のABA濃度で検証していますが、それこそ薬のように精製した超高濃度のみで影響が出ています。
実験対象はヒトや動物ではなく細胞です。
ちなみに活性酸素=悪のようなイメージですが、体を守るための重要な機能を持っていて、私たちの体内には常に存在しています。
スミマセン、ちょっと難しくなってきました。簡単に言うとこういうことです!
異常な量のアブシジン酸(お茶碗数百杯レベル)を摂取しなければ活性酸素は増えません。
そしてアブシシン酸は水に溶けて流れ出ていくので体内にたまることは考えにくいです。
アブシシン酸は玄米だけじゃなく、植物ならほぼ例外なく含んでいて、私たちは日常的に摂取しています。
玄米を含む穀物、野菜、果物を普通に食べる量なら、アブシシン酸を気にする必要はありません。
活性酸素と同じように、アブシシン酸も過剰な量が問題になるんですね。
※最近の研究では植物だけでなく、藻類、コケ、シダ、菌類、動物からもアブシシン酸が検出されています。
植物ホルモン・アブシシン酸の進化と機能植物ホルモン・アブシシン酸獲得のルーツ
植物ホルモンは種子植物に広く存在し,低濃度で生理活性や情報伝達を細胞間で行う物質である.なかでもアブシシン酸は気孔の閉鎖,種子の成熟,休眠に働き,特にストレス応答に重要である.近年,種子植物におけるアブシシン酸レセプターの実体が明らかにされ,シグナル伝達における分子機構の解明がめざましく進んでいる.一方で,種子植物以外でもシアノバクテリア,藻類,コケ,シダ,菌類,動物などからも相次いでアブシシン酸が検出されている.
2017 公益社団法人日本農芸化学会
アブシシン酸(Abscisic Acid、ABA)で情報を探しても、人体に有害という論文や記述は見つかりませんでした。
(果物が熟していく過程でアブシシン酸が増えるなどの報告は多数あります)
フィチン酸

フィチン酸(略称:IP6)は色々な植物の種にある生体物質の1つです。
植物に必要なリンの貯蔵庫としての役割を果たしています。
フィチン酸には強いキレート作用(他の物質と結びつく動き)があります。
キレート作用により必須ミネラル(カルシウム、鉄、銅、亜鉛など)の吸収を阻害します。
「えー、それだったら玄米に含まれるミネラルは意味がないじゃん」
「他の食品のミネラルがダメになってしまわないの?」
という疑問が出ると思います。
フィチン酸と亜鉛の吸収率に関するヒトの健常者を対象としたレポートがこちら。
Adaptation in human zinc absorption as influenced by dietary zinc and bioavailability.
この実験では、低亜鉛、低フィチン酸の食事が亜鉛の吸収率に影響を与えたという結果が出ています。
(注意すべきは、フィチン酸だけでなく亜鉛(ミネラル)の量も関係するということ)
よーし、話が難しくなってきて、つまんない顔が見えてきたぞー。
フィチン酸について、シンプルに答えを出しましょう。
「フィチン酸は食事から摂る量であれば悪影響はない」
ということです。
無機質(ミネラル)吸収阻害に要するフィチン酸摂取量は、これまでの研究から推定すると、少なくとも現実レベル(0.035%)の10倍以上を要することが推定される。
フィチン酸は玄米だけに含まれる成分ではありません。
小麦、トウモロコシなどの穀類や豆類にもしっかり含まれています。
つまり私たちは日常的にフィチン酸を摂取しているんです。
食事から摂取する分量であれば、フィチン酸によるミネラルの吸収阻害は気にしなくても大丈夫。
最近ではフィチン酸の抗がん作用、抗酸化作用の方が注目され、研究が進められています。
フィチン酸は悪者ではなく、実はメリットの方が多かった!
アクリルアミド

アクリルアミドは水に溶けやすい化学物質で、通常は白い粉のようなものです。
アクリルアミドは食べ物に使われるものではありません。
紙を強くしたり、土を固めたり、化粧品に含んだりして使用するものです。
食べ物に関係がなさそうなアクリルアミドですが、調理によって発生することが分かりました。
(食品を加熱処理をするとアクリルアミド以外にも様々な物質が生成、分解されます)
炭水化物を多く含む食材を高温で加熱すると発生します。
2002 年、スウェーデン政府は、ストックホルム大学と共同で行った研究の結果として、炭水化物を多く含む食材を高温で加熱した食品に mg/kg 相当のアクリルアミドが生成されることを報告している(NFA 2002、内閣府食品安全委員会 2013、農林水産省 2015b)。
評価書 加熱時に生じるアクリルアミド(食品安全委員会)(※5ページ目から)
このアクリルアミドは人体に有害な物質です。
日本だけでなく国際機関でもアクリルアミドに気をつける、減らすような取り組みをしています。
「そんな危険な成分が含まれているなんて!」
「もう玄米なんて食べられないわ!」
そう思うのは仕方のないことかもしれません。
でも実は、多くの人がアクリルアミドを何度も摂取しています。
おそらくあなたもその一人。
アクリルアミドはポテトチップスやフライドポテト、かりんとう、ビスケット、揚げ物などに多く含まれているからです。
熱を使った料理には大なり小なりアクリルアミドは含まれるんですね。
アクリルアミドを全く摂取しない=火を通す料理を全く食べないということ。
問題になるのは摂取するアクリルアミドの量です。
では玄米についてはどうなんでしょうか?
調理加熱でも、「煮る」、「蒸す」、「ゆでる」は、水を利用した加熱調理であり、アクリルアミドはほとんどできないことが知られています。
水を使って炊く米に含まれるアクリルアミドは、焼き物や揚げ物に比べて遥かに少ないです。
玄米のアクリルアミドを気にするなら、ポテトチップスや揚げ物を減らした方がよっぽど現実的ですよ。
結論:「玄米に含まれるアクリルアミドはすごく少ないので気にしなくていい」
3つの毒性の対処方法
アブシシン酸、フィチン酸は玄米を発芽させることでその影響を弱めることができます。
アクリルアミドは玄米を炊く時の温度を120℃以下にすることで発生しにくくなります。
玄米の炊飯器なら、これらの作業がすべてワンタッチで可能なのですごく楽ですよ。
子供に食べさせるから本気で調べました
ブログやSNS、ニュースサイトなど、インターネットには情報が溢れています。
その中には疑わしい情報も沢山ある。
商売やら政治やら、皆さん色々な事情があるんだと思います。
そういう本当かどうか怪しい情報は無くならないし、どうこう言っても仕方ない!
厄介なのは、悪気なく怪しい情報を広めている人。
よかれと思って人に伝えている情報が、実は科学的な根拠のない話で、どんどん広まって常識のようになることがあります。
その情報によって人命にかかわる事故が起きることだってありえるのに。
ウィスコンシン医科大学の研究グループが信頼性の高い情報とデマ情報、どちらが広まるか?という実験を行いました。
Zika virus pandemic-analysis of Facebook as a social media health information platform.
ジカ熱に関する200の記事や動画に対して、アクセスや拡散の状況を調査したんです。
そしてデマ情報(誤解を生む情報)がはるかに多く拡散したという結果が出ました。
つまり「正確な情報よりもインパクトの強い情報に人は反応してしまう」ってこと。
「え!玄米って健康そうなのに実は毒があるの!? 怖っ!」みたいにね(笑)
これはもう人間の性質や情報化社会の特徴なので、そう簡単にどうこうできるものではないです。
信頼できる情報を調べることって難しいし時間がかかります。
簡単でインパクトがある情報の方が楽なんですね。
英語の論文を読むとか正直しんどいですよ(笑)
さらに主張している人や団体、狙いを読むとなると手間がかかっちゃう。
例えばJT(日本たばこ産業株式会社)が「実はたばこって無害なんです」と主張しても、それは利益のために言ってる可能性が高いわけで。
なるべく関係のない第三者のデータを見る必要があります。
科学的な根拠も無く、玄米を悪者にして食べないのは凄くもったいない!
私や私の家族はもう8年間も熟成玄米を食べています。
玄米さえあれば全ての病気が完治して健康になるぜヒャッホー!とは言えません。
それこそ科学的な根拠に欠けますからね。
それでも玄米は現代社会を生きる私たちにとって価値のある食べ物だと思います。
おかげさまでうちの家族は大きな病気になることもなく、毎日元気に過ごしています。
頑張らずに健康になるために、熟成玄米はピッタリなんです。
つまり私が言いたいのは、
「根拠のない怪しい理屈で玄米を否定するより、メリットを取ろう!」
ってことです。
情報を調べるのは簡単だけど、それが正しいかどうかを見定める必要があります。
そういう意味ではこのホームページの内容だってそうです。
玄米を食べている私が書いている内容なんだから、玄米の良い事しか書いてないかもしれない。
だからこそ最初に言ったエビデンス(科学的な根拠)が大事だと私は考えています。
玄米の毒性に対する私の結論
玄米に関して言うと、アブシシン酸、フィチン酸、アクリルアミドを毒と言うのは少し大げさな気がします。
この3つは多くの食品に含まれていて、全く摂取しないことはほぼ不可能。
問題は摂取する量で、玄米を食べる分には影響がない範囲と言えます。
気になる人は「発芽した玄米を食べる」「120℃以下で炊く」をすればOKです。
これは玄米の炊飯器を使えば簡単にできますよー。
なでしこ健康生活

